新左の猪撃ち
どんな伝承か
嘘こきの名人といわれた上津具の新左が語った鉄砲自慢の一つ。村の衆が大勢で猪を追い出した。おれが山の中腹で鉄砲を構えて待っていると、猪が谷を駆け上がって転がるようにこちらへ飛んでくる。おれは慌てはしない。まず一発、三枚下を狙って撃ち放したがこれは外れた。猪はもう目の前まで来ている。それでも慌てず二発目を撃つと、たしかに手応えがあったのに猪の姿が見えない。そこで皆と探しに行くと、谷を越えた向うの山の草刈場の坪木に引っかかって死んでいた。皆が手を叩いて、いや鉄砲は新左に限ると言ったものだ、という話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。