女人禁制を破り石にされた巫女
どんな伝承か
両神山はかつて女人禁制で、男だけが登れる山だった。これを聞いたある巫女は、神に仕える清らかな身の自分がなぜ登ってはならないのかと憤り、周りが止めるのも聞かずに一人で登ると言い出した。紅葉の季節、巫女は檜笠に手甲の身支度で出発したが、曲がりくねった道を何度か回って平らな所に出て、ほどけた草鞋の紐を結び直そうとした瞬間、何かがぴかりと光り、その姿はかき消えた。翌朝、男三人が探しに行くと道端に見慣れない石が転がっており、人々は巫女が神罰で石にされたと悟った。石の在りかは今は分からないが、山には巫女を祀ったとみられる一位墓があるという。
原典より
両神山は、武甲山と共に秩父連山中の秀峰であり、空に聳えるその峨々とした姿は雄大そのものであります。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。