長泉院の縁起に伝わる龍女の龍燈
どんな伝承か
旧荒川村上田野にある札所二十九番笹戸山長泉院の縁起によると、元正天皇の御代、見目山のふもとの淵から毎夜子の刻ごろに龍女が現れ、山頂に龍燈を捧げたという。はじめは月の光のように見えたその火は、やがていくつにも分かれて輝き渡り、人々は怪しみつつも尊んで見守った。そこへ仮の姿をとった僧が十人余り現れ、小笹の茂る岩屋の中から本尊を感得して、ここに安置したと伝える。原典はこれに添えて、龍燈の伝説は各地に多く、松や杉に掲げられる形をとるものだと述べ、柳田国男が航海の船への灯火の合図が伝説になったものと考えたことも紹介している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。