山姥の叫びで松と藤が絶えた武甲山
どんな伝承か
日本百名山の一つ武甲山は、日本武尊が東征の折に数日滞在したという話をはじめ多くの伝説をもつ。昔この山には魔力を持つ恐ろしい山姥が住み、里へ下りては村人を苦しめていた。ある秋の日、麓の宇根で女が道端の石に腰かけて悲しんでいた。通りかかった行基上人が訳を尋ねると、前日畑に待たせておいた七歳の子が消えてしまい、山姥の仕業らしいという。上人は女を帰し、山頂で十七日間祈った。魔力を失って現れた山姥を捕らえ、松に藤蔓で縛って懲らしめると、山姥は悔いて自分の歯を抜いて差し出しつつ、「松藤たえろ」と叫んだ。以来武甲山には松と藤が絶え、その歯は横瀬村刈米の萩の堂に伝わるという。
原典より
美しい秩父連峰の中にひときわ目立ってその雄姿を示している武甲山は、日本百名山の一つにかぞえられ、又往古、日本武尊が東夷征伐の折、数日間滞在せられたという物語を始め、これにまつわる幾多の伝説を秘めております。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。