手放すと凶事が続く大日如来像
どんな伝承か
江戸末期、みぞれの降りしきる師走半ばの夕暮れ、富田町新屋敷のむら外れにある草屋の門口に、一人の行者がたたずんでいた。若い家主夫婦に迎えられた老僧は、寒さと長旅の疲れから再び笈を背負う気力も尽き、親切な介抱にほだされてひと冬をこの家で過ごした。春浅い二月末、元気を取り戻した老僧は再生の恩を謝して行脚の旅に立ち、別れに際して報恩のしるしに、片時も身から離さなかった一体の大日如来像を若夫婦に授けた。四代目の子孫がわずかな負債の形に像を手放したが、持ち去った金貸しは年ごとに凶事が重なり、恐れをなして返してよこしたという。
原典より
江戸末期、その年もわびしく暮れようとしていたみぞれ降りしきる師走半ばの夕まぐれ、富田町新屋敷のむら外れ、ささやかな草屋の門口にたたずむ一人の行者の姿があった。—— 郡山の伝説(郡山市教育委員会(編)・大島建彦(監修)・ふるさとの文化財調査事業・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
郡山の伝説(郡山市教育委員会(編)・大島建彦(監修)・ふるさとの文化財調査事業・1986年(昭和61年))
『郡山の伝説』は、郡山市教育委員会が大島建彦の監修を受けて昭和六十一年に編んだ伝説集である。昭和五十九年度の「ふるさとの文化財調査事業」で調査員が市内全域から採集した伝説を中心に、郷土誌などで補った話を収め、采女伝説や坂上田村麻呂・源義家・弘法大師にまつわる話が多い。『日本伝説名彙』にならって木・石岩・水・塚・坂峠山・祠堂・家村・祭礼行事の部に分け、各話に伝承地と報告者名を添え、巻頭に監修者の解説を置く。