城官橋に浮かんだ白い怪物
どんな伝承か
明治十年頃は特別の大旱魃で、四カ村堰の水も少なく、百姓は毎晩田の水引きをしなければならなかった。ある晩、喜兵工が鎌を片手に一人堀を登って城官橋へ来ると、一寸先も見えぬ闇夜であった。堰の東は色部野といい、杉林が生い茂って昼でも暗い所である。橋の上から何気なく前方を見ると、闇の中に白い怪物がくっきりと浮かんでいた。剛気な喜兵工が近づくと、怪物は音もなく流れの方へ動き、堰の中州へひょいと上がった。よく見れば老人から聞いた河童に似ている。手取りにしてやろうと堰をこいで組みつくと、怪物は掻き消すようにいなくなった。気力を失った喜兵工は下浅川の長二郎の家に泊まり、翌日帰ってから二、三日床についたという。
原典より
明治十年頃のことですが、この年は特別大旱魃で、四カ村堰の水も少く、百姓は毎日毎晩田の水引きをしなければなりませんでした。—— 高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。