藤の精が下女に与えた尽きない銀
どんな伝承か
入生田村の喜左工門の家が栄えていた頃、隣村和田生まれの下女が奉公していた。主人夫婦にまめまめしく仕え、稀に見る女だと村人に褒められていた。屋敷の片隅には樹齢の知れぬ藤の大木があり、つるは四方に茂って畑一畝ほどを覆っていた。邪魔だから切ろうと口癖に言う主人に、下女は、あれは旦那さまをお守りする御神木だと先代から聞いていると諫め、主人は切るのをやめた。ある夏の夕暮れ、女が藤の木の傍を通ると白髭の老人が現れ、自分は藤の精だと名乗り、一枚残しておけばまた元通りに溜まる尽きない銀だといって小粒の銀を数枚与えて消えた。女は主人に差し出したが、正直ゆえ天が授けたものだと言われ、大事に持っていたという。
原典より
入生田村の喜左工門さんが、働き盛りで家も大変豊かに上昇している頃でありました。—— 高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。