骨を抜いてもらい老婆を送る狼
どんな伝承か
今から百三十年ほど前、露藤部落の中部落に元気な老婆がいた。当時は何もかも背負って運んだもので、老婆も作物を背負って窪田の家中や米沢の城下へ商いに出て暮らしを立てていた。帰りは五輪窪のあたりから暗くなるのが常で、この辺は萱が密生して道を塞ぎ、晩秋はことに寂しかった。ある夕方、萱野の道へ分け入ろうとすると、狼が一匹、大口を開けている。近づいてみると苦しそうに息をしているので、老婆は荷を下ろし、口に手を入れて喉につかえた骨を取ってやった。狼は尾を振って、老婆の姿が見えなくなるまで見送った。以来この道を通るたびに狼が現れ、飼犬のように萱野の尽きる所まで送るようになり、老婆は握り飯を残してやったという。
原典より
今から百三十年程前のこと、露藤部落の中部落にえらいお婆さんがおりました。—— 高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年))
『高畠町伝説集』は、山形県立高畠高等学校文芸班が熊木成夫教諭の指導で編み、昭和三十二年に高畠町伝説集刊行会から発行した伝説集である。高畠町とその周辺に伝わる社寺の縁起、人物、怪異、動物、地名の由来などを、古老からの聞き書きと古記録から採り、内容の多くは郷土研究家安部名平次の蒐集による。神仏・人物・怪異・動物・什物・地物・地名・地誌の八篇に分け、町長の序と校長・安部名平次・武田好吉の文、編者の後記を付す。