神水で蘇る野馬追の落馬
どんな伝承か
野馬追の当日、五つの備えがついに一つとなり、数百の野馬は東に向かって小高の古城、妙見の神庭に追い込まれる。翌日の未明、屋形が神庭の仮屋に出て、長竿に縄を掛け、大きく悍る馬の首に投げ掛けると、小人数百人が群れ立ってこの野馬を捕える。勇んで群馬に入った者が落ちると、蹄がその身に当たって忽ち倒れ、息が絶える。傍から神水を顔に注ぐと速やかに蘇生するといい、奇怪なことである、これこそ神明の徳で崇め敬うべきだと『奥相茶話』は記している。捕えた馬は神木に繋ぎ、太守がこれを買い上げたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。