神水で蘇る野馬追の落馬
どんな伝承か
野馬追の当日、五つの備えがついに一つとなり、数百の野馬は東に向かって小高の古城、妙見の神庭に追い込まれる。翌日の未明、屋形が神庭の仮屋に出て、長竿に縄を掛け、大きく悍る馬の首に投げ掛けると、小人数百人が群れ立ってこの野馬を捕える。勇んで群馬に入った者が落ちると、蹄がその身に当たって忽ち倒れ、息が絶える。傍から神水を顔に注ぐと速やかに蘇生するといい、奇怪なことである、これこそ神明の徳で崇め敬うべきだと『奥相茶話』は記している。捕えた馬は神木に繋ぎ、太守がこれを買い上げたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・(平将門伝説の研究書))
梶原正昭・矢代和夫『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』を、論考の節単位で全67事例として収録した研究書(地域伝説集ではない)。平安中期の平将門(承平天慶の乱)をめぐる伝説を、英雄の死と伝説の誕生(冥界・調伏・怨霊・首の怪異・七人の影武者・妙見信仰・石化)、落人たちの運命(将軍太郎良門・如蔵尼の堕地獄と救済・滝夜叉姫・桔梗塚の寵妃・後裔と将門遺跡)、将門伝説の展開(馬の文化・関東一円の分布圏・文芸化・首塚の祟りと再評価)として論じる。