アワビが船底を塞いだ日蓮の猿島漂着
どんな伝承か
横須賀港の沖に浮かぶ猿島には、日蓮上人にまつわる伝説がある。建長五年、日蓮は鎌倉へ布教に向かうため東京湾を舟で渡ったが、海が荒れて古い舟の底が裂け、沈みかけた。船頭が泣き出す中、日蓮が舳先で題目を唱えると海は静まり、裂け目からの水も止まった。一番近い島に舟を寄せて一夜を明かし、翌日舟を調べると、大きなアワビが船底の亀裂に張りついて水を防いでいたという。日蓮が泊まったとされる岩穴は「日蓮洞穴」と呼ばれ、由来を記した立札がある。島の名は、翌朝白い猿が現れたことにちなむと伝わる。
原典より
あれほど荒れ狂っていた海が、次第におさまると同時に、船底にあいた穴も外側から何かがふさいで水もれがとまったではないか。—— 神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年))
『神奈川の史実と伝説』は、新聞記者から県政の仕事に転じた小森良章が昭和五十年に著した郷土史の読み物である。倭建命の東征から鎌倉幕府の滅亡までを範囲に、神奈川県内に残る伝説を十一の篇にまとめ、走水の弟橘姫や足柄山の金太郎などを取り上げる。各篇は伝承地を副題に掲げ、伝説とその背景にある史実を結びつけて語り、古事記や吾妻鏡などの記録を引きながら著者の推測も交えている。