蛇が谷・親指が蛇の頭に
どんな伝承か
昔、鎌倉には蛇が谷と呼ばれる谷が三か所あり、そのひとつは釈迦堂口の切り通しのそばだという。この谷に、若い男と暮らす老女がいた。老女には二十歳前の娘があり、年老いた身で若い男と連れ添うのを恥じて、渋る男を説き伏せて娘と一緒にさせ、自分は近くに家を建てて移った。ところが数週間たっても老女は部屋から顔を出さない。心配した娘が訪ねると、老女は、自分から二人を添わせたのにいつしか嫉妬にとらわれ、のぞき見をするうち両手の親指が蛇になったと打ち明けた。見れば親指は目も口もある蛇の頭に変わっていた。娘は寺に入り、男も出家し、老女は諸国を修行して回るうちに指が元に戻ったという。
原典より
古い屋敷址にまつわる伝説 一二七神社・寺院・堂・祠にまつわる伝説 一三五—— 神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。