猿島の白ザルと石渡左衛門の夢告
どんな伝承か
建長五年(一二五三)、日蓮は房州から小舟で鎌倉へ向かう途中、東京湾で嵐に遭い、今の猿島にたどり着いて一夜を明かした。翌朝、一匹の白い猿が現れて陸の方を指さしたので、日蓮はその方角へ舟を進めた。島の名はこの因縁によると伝える。同じ夜、公郷村の石渡左衛門は「日輪家内にいる」という夢のお告げを受け、夜明けに米ヶ浜へ出ると、遠浅で浜に着けない舟があった。舳先で経を唱える僧を尊く感じた左衛門は日蓮を背負って上陸させたが、両足はサザエの角で血に染まった。わけを聞いた日蓮が浜を見下ろす洞穴で七日七晩法華経を唱えると、以後米ヶ浜のサザエには角がなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。