峰の薬師の比丘尼淵
どんな伝承か
津久井湖の北側、小高い山の頂にある峰の薬師には、悲しい話も伝わっている。昔、峰の薬師の堂守として、美しい尼僧がたったひとりで暮らしていた。どういう事情でこの山奥に来たのか里の誰も知らず、尼僧の顔はいつも憂いに沈んでいたので、里人は何か大きな心配ごとがあるのだろうと噂していた。ある夕方、尼僧が三つか四つほどの子の手を引いて山を登っていく姿が見られた。その数日後、薬師堂の下の深い淵で、身を投げて死んでいる尼僧と子が見つかった。里人は二人を哀れんで手厚く葬り、この淵を比丘尼淵と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。