馬に化けて魚を盗む狐
どんな伝承か
逗子市新宿の披露山の頂にある稲荷のお夏という雌狐は、隣の久木の稲荷の雄狐孫三郎と夫婦になり、二匹はいたずら者として知られた。好物は生きのいい魚で、小坪の漁師村から鎌倉や金沢へ魚を売りに行く者が披露山の坂を越えるところを狙った。簡単にはだまされない魚売りもいたが、孫三郎はその男が馬好きだと知ると、坂を上ってくる男の前で見事な馬に化けていなないた。掘り出し物だと男が籠を下ろして近寄ると、馬は一歩下がり、男が進めばまた下がる。これを繰り返して疲れ果てた男が籠に戻ると、中の魚はすっかり消えていた。男は孫三郎にやられたと悔しがったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。