赤ん坊が地蔵に変わる狸坂
どんな伝承か
麻布の宮村町のあたりは古くから狐狸の本場とされ、いまもくらやみ坂・狸坂・狐坂といった名が残る。狸坂はくらやみ坂の南、一本松町との境にある坂で、数十年前までは樹木が鬱蒼と茂る寂しい場所だった。ここには古狸が棲み、人を化かしては石塔や石地蔵を運ばせるのを楽しみにしていたという。夜になると道端で赤ん坊の泣き声がする。かわいそうにと抱き上げて歩くうち、いつの間にか狸坂まで連れてこられ、気づけば腕の中は泥だらけの地蔵に変わっている。婚礼の帰りに紋付袴を台なしにした者もあった。そのため坂にはいつも石地蔵や庚申塔が転がっていたといい、これが坂の名の起こりだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
佐藤隆三編『江戸傳説』を全42話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。