僧に化けて学んだ伝通院の白狐
どんな伝承か
小石川表町、伝通院の東にある沢蔵司稲荷は市内屈指の稲荷で、社の裏の崖下には狐が棲むという洞穴がある。伝えによれば、この森に古くから棲む白狐が、太田道灌の築城のとき地中から出た十一面観音を得て洞に納め、神通力を得た。狐は僧の姿で伝通院の所化寮に入り、たちまち浄土の奥義を修めて一山を驚かせたが、どこから来てどこへ帰るのか誰も知らない。跡をつけると寺の東の森で姿が消え、森には蕎麦を包んだ竹の皮が散らばっていた。門前の蕎麦屋にも、客のいない時分にばかり現れていたという。やがて沢蔵司は和尚に自分は白狐だと告げ、観音像を託して白狐の姿に戻り消え去った。その像を本地仏として祀ったのが沢蔵司稲荷である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。