天狗の通り道で建物が燃える三角池
どんな伝承か
沓野山の七不思議の五つ目。志賀山のふもとの三角池は、志賀高原に七十余りある湖沼のなかで最も美しい池とされるが、昔は鬱蒼とした針葉樹林に囲まれ、紺碧の水面には妖しい気配が漂っていた。山小屋や、草津街道を行く旅人相手の茶店を建てても、そのたびに原因の分からない火が出て焼け落ちた。村人は、志賀山の山神である天狗が羽団扇で山頂から麓へ飛ぶ通り道なので邪魔な建物を焼くのだと考え、誰も家を建てなくなった。妖気に引かれて命を絶つ人もいたが、その亡骸は天狗が焼いてしまい見つからないと信じられた。
原典より
山仕事をする人がその辺に山小屋を建てたり、草津街道往来の旅人のための茶店を建てたりしたことがあったが、その都度原因不明の火事が起こり、跡かたなく焼けてしまう。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。