八弥をさらった志賀高原の天狗の太鼓
どんな伝承か
志賀高原の岩菅山や志賀山には天狗が棲んでいたといい、その行動範囲は広く、山稼ぎの人々はしばしば肝を冷やされた。天狗は空に幕を張り、鼻天狗・赤天狗・カラス天狗などが集まって太鼓を打ち鳴らし祭りをするという。その太鼓が鳴っているときに出歩くとさらわれてしまうと村人は恐れた。昔、八弥という若者が天狗の太鼓に誘われ、夜中に夢遊病者のようになって外へ出て、音のする方へ吸い寄せられるように飛んで行った。後を追ったが見失い、八弥はそれきり帰らなかった。発哺天狗神社境内の八塚は、その八弥を祭ったものと伝わる。
原典より
昔、八弥という若者が天狗の太鼓に誘われ、夜中に夢遊病者のようになって外に出て、太鼓の音の方へ吸いよせられるように飛んで行った。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。