四十里を流れ着いた漁村の泛子
どんな伝承か
十三潟の水戸口の番小屋のあたりで、流れ木の中に何か珍しいものはないかと気をつけているうちに、ふと目に入ったのは一個の泛子であった。一方には南秋田郡男鹿戸賀港の文字がかすかに見え、他の面には海上安全漁村繁昌云々と書いてある。男鹿もここからでは四十里近くの南である。棄てたのか流したのか、あるいは持ち主ともども見失われたのか、元の地の人たちは、こうして自分が拾って帰り、朝晩見守っていることも知らないであろうと著者は書いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。