旅の炭焼が語り継いだ江刺郡の昔話
どんな伝承か
炭焼は氷河のような遅々たる速力で、この四五十年の間、少しずつ北の方へ向かって流れている。彼らが林の奥へ持ち込むのは米や塩味噌ばかりではなく、炭を買い炭を使うような社会の生活そのものであった。金属の冶鋳にばかり炭が用いられた頃には、その物語も多くの神秘と呪法を含み、炭焼藤太と金売吉次の長者の物語も、鋳物師の行かぬ処へは炭焼が携えて行ったらしい。現に佐々木喜善の江刺郡昔話も、たった一人の旅の炭焼が話してくれたというものが九割を占めている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。