何なりとと呼びかける古い踊歌
どんな伝承か
今でもこの村ではよく踊るかと娘たちに尋ねると、今は踊らない、盆になれば踊ると軽くあしらわれた。あの歌は何というのだろうと海の方を向いて待っていると、年かさの一人が鼻唄のようにして「なにヤとやーれ/なにヤとなされのう」と歌ってくれた。古くから伝わるこの歌を、この浜でも盆の月夜になるたびに歌いつつ踊っていたのである。忘れきれぬ日々の痛苦や、どんなに働いても迫って来る災厄があればこそ、踊の歌の調べは悲しいのであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。