村に一人だけの学者・算用師
どんな伝承か
雪の飽田根の一篇に、阿仁の小滝という村の話がある。一村の者がみな文筆に疎いため、この地方の風として多少の読み書きのできる者を外から傭い入れ、それを算用師と呼んでいた。それがたった一人の村の学者であった。ある夜、思いがけず偉い人が来て泊まったというので、村長は早速その算用師を喚んで相手をさせる。その光景は目に見えるように書かれており、後にその男が一句を作って書いて出したというあたりは、今もありそうな微細な人間味である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第3巻』は、柳田国男の紀行・日記・随筆を集めた著作集の一巻である。相模・武蔵の村々を歩いた「水曜手帖」、昭和二十三年八月の自序を持つ「北国紀行」、明治四十三年の「五十年前の伊豆日記」、国際聯盟の委任統治委員会に勤めた大正十一年の「瑞西日記」と「ジュネーブの思ひ出 その他」を収める。後半の「菅江真澄」は昭和十七年二月の序を付け、真澄の著述と旅の跡を年を追ってたどり、写真解説を添える。