九一色村の木地屋免状
どんな伝承か
富士の北麓、西八代郡の上・下九一色村は、早くから木地屋が開いた村らしい。村名は木工で年貢に充てた意味かと柳田は推測する。「甲斐国志」によれば、この村は山に囲まれて耕地に乏しいため諸商売の役を免ぜられ、寛永十九年かと思われる壬午の年の七月に大久保新十郎の名で免状を賜った。武田氏の時代の先例どおり、他国へ出る者は鑑札を持って荷を運び、宿場で口銭を取られず、他所で店を開いても妨げられない、陸は馬の蹄の踏む所、海は舟の通う限り往来自由だと誇っていたという。この文言が木地屋の伝える承平五年の綸旨と似ていることから、武田氏の政策で招かれて住んだ者が小椋の同類だったのではないかと柳田は考える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。