尾花沢の谷底に住む裸の一家
どんな伝承か
かつて羽前の尾花沢付近で、一人の土木の工夫が道に迷い、人の住みそうにもない谷底に親子三人の一家族を見た。粗末ながら小屋を建てて住んでいたが、三人とも丸裸であったという。女房はひどく人を懐かしがり、いろいろと工夫に向かって里の話を尋ねた。その亭主は世の中に対してよほど大きな憤懣があったらしく、再び平地へは下らぬという決心をして、こんな山の中へ入って来たのだと語った。工夫が一度そこを立ち去った後、再び引き返して同じ小屋へ行ってみると、女房が工夫と話をしたことを責められ、縛り上げられて折檻を受けているところだったので、詳しい話も聞けずに早々に帰り、その後のことは一切不明になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。