加賀遊泉寺村・伊右衛門の神隠し
どんな伝承か
加賀の能美郡は天狗が人を隠したという話の多い土地であった。同じ郡の遊泉寺村では、今から二十年ほど前に伊右衛門という老人が神隠しに遭った。村中が手分けをして捜し回った結果、隣部落との地境の小山の中腹、土地で神様松という傘の形をした松の樹の下に、青い顔をして坐っているのを見付けたという。村の人たちがこの老人を捜し歩いた時には、鯖食った伊右衛門やいと口々に唱えたという。神様、殊に天狗は最も鯖が嫌いだから、こう言えば必ず隠した者を出すものと信じていたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。