肥後球磨の猪罠に死んだ女
どんな伝承か
小山勝清の外祖母が語った話である。明治の初め、肥後球磨郡の四浦村と深田村の境にある高い山の官有林の中で、猟師が仕掛けておいた猪罠に掛かって、一人の若い女が死んでいた。女は丸裸であったという。人々は遺体を近くの土地に埋めたが、その後に祟りがあったと伝えられる。柳田はこの話を、日向飫肥領の菟道弓の女、高鍋領小菅嶽の罠の女と並べ、三つの出来事が少しずつ時と場所を違えながら、いずれも霧島から市房にかけての連山の中で起こり、しかも互いに真似た跡がない点を重く見て、今後も新しい報告が加わるだろうと期待している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。