石油ランプで見た落城の遺物
どんな伝承か
志村国作老の案内で暗い山径を登り、木立をくぐり岩角を踏んで頂上へ出た頃には、あたりはすっかり夜になっていた。本丸跡に鎮座する八王子神社に着くと、東方には八王子市街の灯が浮かび、南の空遠くには箱根の航空灯台がちらちらと明滅していた。社務所で借りた提灯を頼りに闇の台地を一巡した筆者は、ふたたび社務所を訪れ、この山中から掘り出されたという槍の穂先や刀の断片、銃丸、鎖帷子の破片、永楽通宝、馬の歯や骨、化石した兵糧の米麦などを、石油ランプの下で見せてもらった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年))
『行楽と史蹟の武蔵野』は、寺島裕が昭和十二年に著し、新生堂から発行した武蔵野の史跡探訪記である。狭山丘や山口貯水池の周辺から、行田・粕壁・生田・淀橋・中野・柴又・多摩御陵などの社寺、城址、古戦場、塚を歩いて訪ね、交通の便とともに由緒や伝説を記す。小橋一太と新井堯爾の序文、著者の自序を巻頭に置き、前著「史蹟の武蔵野を探ねて」に続く行楽案内として土地ごとの短い節を連ねる。