寝袋に混じった尼の髪と悪夢
どんな伝承か
今から三十年ほど前、新婚の夫婦がスキーをしに信州の志賀高原へ出かけ、雪原でキャンプをして、友人Sから祝いに贈られた寝袋に二人でもぐって眠った。夫の夢には頭を丸めた若い尼が二十人余りも現れて代わる代わる誘い、最後の一人は鋏を突きつけて迫った。同じ夜、妻は大勢の尼につねられ責め立てられる夢にうなされていた。翌晩、湯田中の温泉旅館に泊まると何事もない。帰宅して寝袋を調べると、真綿の中に女の髪の毛が大量に混じっていた。手紙で問うとSは、尼の髪を入れると御利益があると聞いてわざわざ作らせたと答えたという。
原典より
真綿の中に、女の髪の毛らしいものが、たくさん混っているではないか。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。