③ 共同井戸の話
どんな伝承か
宮久保の坂上には共同井戸が三つしかなかった。加藤ひろし方、三中の入口にある染谷いざえもん方、花屋の染谷げんじろう方の井戸である。昔の人は井戸を埋めると井戸神様の祟りがあるといい、埋めるときはパイプを通しておけと教えた。ガスが溜まって次に掘る者に障るという理屈で、昔からやっていることには皆根拠があるのだと話者は言う。室に入るときは必ず提灯を点けて入れというのも同じである。坂下の稲葉さんの井戸も共同井戸で、裸足で過ごす四月から十一月はそこで足を洗った。
原典より
坂上での共同井戸は、加藤ひろしさんの家の方、染谷(村越 三中の入口)いざえもんさん、染谷(花屋)げんじろうさんとこの井戸は三つしかなかったんですよ。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。