器量をうらやんで隣の娘に憑いた犬神
どんな伝承か
三好郡井川町のある犬神持の家の娘は背が低く器量もよくなかったので、年ごろになっても縁談がなく、母親は娘の身を嘆いていた。一方、隣の娘は背が高くきれいで、あちこちから縁談が舞いこんだ。母親がそれをうらやんだため、犬神が隣の娘に取り憑いた。祈祷をすると、娘に憑いた犬神が口を開き、うちの娘の嫁入りが済むまでは帰らない、母親にも憑きたかったが気が強くて憑けなかった、痛い目にはあわせないからいる間は家族同様に扱ってくれ、と語ったという。
原典より
そこで犬神持の母親は隣りの娘をうらやましく思ったので犬神がその娘に取憑いたのである。—— 徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。