鈴木氏が切腹した弘法寺石段の涙石
どんな伝承か
市川市真間の弘法寺に伝わる話。仁王門前の六十数段の石段の中ほどに、いつも湿っている石があり涙石と呼ばれる。この寺の檀徒の鈴木氏は、日光東照宮の造営用石材を船で江戸川を遡って運ぶ役目を負っていた。あるとき市川の船着き場のあたりで石を積んだ船が動かなくなり、日光へ届けられなくなったため、鈴木氏は自分の判断でその石を弘法寺に納めて石段を築いた。しかし後にこの一件が幕府に知られ、鈴木氏は石段の途中で切腹した。以来その場所の石が一年中濡れているので、真間の涙石と呼ぶという。
原典より
この寺の仁王門まえの石段は六十数段あるが、その中段に涙石とよばれ、いつも濡れている石がある。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。