ミョウガで宿賃を忘れた客
どんな伝承か
ミョウガを食べると物忘れをするという言い伝えは各地にあるが、鴨川市廻塚で民俗調査をした折、明治二十六年生まれの苅込さんから次のような話を聞いた。昔、ある宿屋に金持ちの客が泊まった。宿の主人は名うての欲張りだったので、客にミョウガをたらふく食べさせ、持ってきた荷物を置き忘れさせようとたくらんだ。あれこれとミョウガ料理を出したところ、効き目がありすぎて、客は荷物を忘れるどころか、肝心の宿賃を払うのを忘れて帰ってしまい、主人は大損をしたという。苅込さんが同じ鴨川市の主基で生まれ育ち、明治時代に聞いた話だという。
原典より
ミョウガを食べると忘れっぽくなる、という伝承は各地で聞くが、鴨川市廻塚での民俗調査の時、明治二十六年生れの苅込さんからこんな話を教えられた――むかし、ある宿屋へ金持のお客が泊った。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。