岩船沖に鳴く沈んだ金鶏
どんな伝承か
夷隅郡大原町岩船の漁民が伝えている海の怪異に、金鶏のはなしがある。むかし、メキシコ船ドンドロイ号がこの沖で遭難したとき、船上で飼っていた金鶏も船につながれたまま沈んでしまった。それからは月夜の晩に金鶏のあわれな鳴声が聞こえるといい、さらに軍服姿の幽霊が船にしがみついたり、火の玉が船をめがけて飛んでくることなどもあるという。この沖では慶長十四年(一六〇九)九月五日、スペインのドンロドゥリーゴ・デ・ヴィヴーロらが船でメキシコへ行く途中に座礁し、乗員五十六人が水死した史実があり、因縁がありそうだと記されている。
原典より
夷隅郡大原町岩船の漁民が伝えている海の怪異として金鶏のはなしがある。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。