鈴木主水と白糸の情死
どんな伝承か
鈴木主水は遊女白糸に迷い、妻のお安は二人の幼子を残して自ら命を絶った。主水は橋本屋に駆けつけて白糸に心中を迫ったが取り合われず、ついに病床に伏した。白糸は巾着切りの大親分稲田郷蔵に身請けされようとしていたが、自分が消えることが主水一家を救う道と思い定め、身請金五〇両を受け取ると、酔った相手を脇差で殺し、金は主水の薬代にしてほしいと遺言して自害した。その夜、病床の主水の枕元に寝巻姿の白糸が現れ、借金と薬代のこと、妻の霊を慰めてほしいことなどを語る。話し終えたとたん橋本屋から自害の知らせが届き、振り返ると白糸の姿はなかった。主水は病が重くなり、白糸の霊に誘われるように死んだという。
原典より
場所 新宿二丁目時代 江戸時代 安永享和(一七七二 一八〇三)のころ神宮外苑の権田原町に、御留守居百人組で、禄高わずか一六〇俵扶持の鈴木主水という武士がいた。—— 新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年))
『新宿と伝説』は、新宿区教育委員会が昭和四十四年に編んだ区内の伝説集である。カッパが出る坂、四谷怪談のお岩、矢来町の化け石、女幽霊が掘った清水など、牛込・四谷・戸塚大久保・新宿・淀橋柏木落合の各地に伝わる六十二の伝説を、江戸の地誌や随筆などから採って収める。第一章で伝説の分布と型を概説し、第二章では地域別に、各話へ場所・時代・出典・解説・参考書を添える。