大根を植えぬ神置の禁忌
どんな伝承か
神置(旧千町村)一帯の地では、大根を植えることを忌んでいる。昔、承和年間に筑紫からこの地へ流されてきた人が、「自分は昔の王族の孫であるが、自分の家はかつて大根に助けられたことがあるので、助けてくれた大根は、自分のいる土地では決して食べない」と誓って、家門で大根を忌み、他に与えることもしなかった。やがて里人に信頼されて郷の里正となり、初めは親族だけで大根を植えることを禁じていたものが、ついに一村全体の習わしとなった。一説に、隣村の佐坪の区も忌家として大根を植えず、路傍に自生していても採らない。かつて戦に敗れたとき大根の根で足を突いたためだという。
原典より
神置(旧千町村)一帯の地では、大根を植えることを忌んでゐる。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。