小便柄杓が歩んで来る
どんな伝承か
牛込で、『おらあ、小便柄杓は何処けえ』という隣家の声を聞きつけた家の兄貴は、隣から柄杓を借りたまま返していなかったことに気づいた。すぐに、忘れていてすまなかった、と謝りながら、框から捨ててあった小便柄杓を返した。すると隣家の主人は、おらのがお前の家に行っていたのか、欲の大きいのもいいものだな、と笑った。『慾の大きいのもいいもんだ、小便柄杓が歩んで来る』という民謡がこの地で流行したのは、この出来事があってからだと口碑に伝える。
原典より
「おらあ、小便柄杓は何處けえ。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。