宗祇の歌に折れた千種浜の盗賊
どんな伝承か
諸国を巡って歌道を求めていた宗祇法師は、面黒く薙刀を提げた者が会釈もなく付き添ってくるのに出会った。盗賊はわけもなく衣を脱げと言い、剥ぎ取ったうえ、さらに袖を一枝ずつ扱いてよこせという。何になさるのかと尋ねると、焚き火にするのだと無造作に答えた。そこで宗祇が、わがための箒ばかりは許せかし、浮世の塵をはきすつるまで、と詠むと、盗賊は感心して剥ぎ取った衣服を返し、この辺りは物騒だからと人里まで送ってくれた。途中で怪しい男二人に会ったが、いずれも目配せをして過ぎて行ったという。
原典より
諸国を巡つて、歌道を求めやうものと、遠か近かの路に続く行く末を知るべに、あてこともなく歩んで行つた宗祇法師は、前から、むらだちの者の、面黒く手の内に切れやうななぎなたを手にを振ひ持ちて、会釈もなくおつき添つて来るのを見た…—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。