若者の妻になった根本の稲荷の白狐
どんな伝承か
根本の稲荷堂の神体は白狐だという。昔、この白狐は猟師に射られようとするところを里の親切な若者に助けられ、その恩に感じて若者と夫婦の語らいをした。家政を助け、そのまま住むようになったという。それから不思議なことが続いた。若者が田を植えねばと思うと翌朝には植えてあり、苗がまばらだと思えば翌朝には他の田より見事に育っている。豊作が続いて身代はよくなり、子も一人生まれた。ところがある日、子に尻尾を見あらわされ、妻は自分は稲荷の狐でもうこの家にはいられないと言い残して姿を消した。若者が山へ行き、今一度姿を見せてくれと泣いて頼むと、狐は一度だけ子に乳を飲ませ、別れを惜しんで忽然と祠の影へ姿を隠したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。