処分された飼い犬が霊験を現す犬不動
どんな伝承か
狂犬病が流行し、警察が野犬の駆除を厳しくしていた頃のことである。琴田で鰻を商う家に一匹の洋犬を飼っていた。巡査から鑑札を受けておけと勧められたが、その日暮らしの貧しさゆえに叶わず、とうとう引き渡さねばならなくなった。犬は悲しんで餌も食わず、夫婦が言い含めて渡すと、程近い新川という所に埋められた。夫婦が卒塔婆を立てておくと、四五日して墓はきれいに掃除され線香が上がっている。産後の肥立ちの悪い者が犬に願をかけると三日で治り、体の弱い孫も快復した。噂は広まり三四里四方から参詣人が集まり露店まで立ったので、警察は官有地から墓を除くよう命じた。掘ると真夏に三十日を経た犬の死骸がそのままであったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。