万騎坂の名の由来
どんな伝承か
鴨川町磯に万騎坂という坂がある。土地の人の説では、石橋山の合戦に敗れた源頼朝が安房の猟島に着き、北郡から長狭へ至るころには勢が一万騎に及んだので万騎坂と呼ぶという。しかし房総雑記や増訂房総遊覧誌は、これを長元三年正月、下総の平忠常が反逆したときのこととする。房総軍記によれば、安房守源光業が長狭に要害を構えたが千葉勢に敗れて安房へ退き、忠常に心を寄せた土地の者が館山で野伏を集めて光業の砦を襲おうとしたが、光業がすでに本城へ帰ったと聞いて兵を返した。その勢が一万騎だったと前太平記にあり、賊徒がこの坂まで軍を進めたのなら一万騎の名も故なしとしないが、逆賊を頼朝の軍と誤るなと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。