東条浦で獲れた古鏡そっくりの鏡魚
どんな伝承か
「房総雑記」を著した嶺田楓江は、かつてこの地を訪れた折、東条浦の漁師の家で奇妙な魚が獲れているのを目にし、絵に写して記録を残した。それによれば、その魚は体が丸く、長さは四尺、幅は三尺ほどで、殻は鏡のように光沢を帯び、姿はまるで古い鏡そのものだったという。中には紫色の肉があった。漁師たちはこれを鏡魚と呼び、古鏡に似ているのが名の由来だと語った。楓江は、おそらく翻車魚の仲間だろうと考えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。