日蓮の産湯に用いた誕生寺の誕生水
どんな伝承か
誕生寺にある誕生水は、日蓮上人が生まれたときに汲んで産湯に用いたと伝えられる井戸である。もっとも今のものは、旧地の誕生堂の跡にあった井戸をそのまま引き継いだにすぎないという。日蓮が生まれたその時、館の庭に不思議にも霊水が湧き出し、同時に海の中にも湧いたので、これを誕生水と呼んだと語られる。のちに明応七年の地震で寺が海に浸かり、いまの場所へ移したところ、そこにもまた水が湧き出したので、それを受け継いだのが今日の誕生水だと口碑は伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。