倉沢山に響く天狗の木伐り
どんな伝承か
奥多摩の倉沢へ通う道すじ、大沢の山で炭を焼いていたころの話である。語り手たちは鍾乳洞のある倉沢山の上手で仕事をし、そのまま小屋に泊まることもあった。すると朝方、ゴテーン、ゴテーンと大木を伐り倒すような音が響いてくる。不審がると、年寄りはあれは天狗のしわざでよくあることだと言った。帰りぎわにも、地をほじくり返すような凄まじい音が、本職の木こりが調子を取るのと同じ拍子で聞こえたという。三十四、五年も前のことだと語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。