十年ぶりに天狗の弟子として帰った武平
どんな伝承か
備中高梁に住む元藩士の武野武平は金毘羅の熱心な信者だった。明治三年三月十日、大権現の祭日だから讃岐へ行ってくると妻のおよしに言い残して家を出たきり戻らず、人をやって探しても行方が知れない。家を出た日を命日として弔っていたところ、十年後の命日に法事をしていると、行者姿の武平がのっそり帰ってきた。象頭山で神託を受け雄善の名を賜って修行し、天狗の仲間入りを許されて難病を治す術を授かったと言い、足の裏にはおぼろな円い紋が見えた。病人を足で踏む荒療治が評判となって拘引されたが、礼を受けていなかったので諭されて放免されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。