住職の遺言に応えて火葬場へ来た狼
どんな伝承か
土佐山田町の影山にある地蔵院は今は廃寺同然だが、明治の初めかその前ごろ、阿波から学識の高い住職が来て檀家に慕われていた。やがて病で身の回りも不自由になると、檀家に迷惑をかけるより、人の肉を好む狼にこの身の始末を任せたいと繰り返しつぶやくようになった。まもなく住職は亡くなり、天気の悪い夏の日、片地の日浦の奥にあるフルマヂの火葬場で荼毘に付された。日暮れに読経しながら火の番をしていると、犬の遠吠えが聞こえ、闇に青白く光る目がいくつも並んだ。狼だと気づいた人々は逃げ出し、住職の願いを狼が悟って来たのだと噂されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。