大峰参りの洞川の宿で聞いた狼の声
どんな伝承か
和歌山県伊都郡の話者が、父から聞いた狼の話である。狼の声はよく通り、障子紙がピリピリと震えるほどだったという。父が大峰山へお参りしたとき、洞川の宿に泊まった。参詣者は夜明け前の三時か四時に起きて水を浴び、身を清めてから山に登るのがならいで、父が早起きしたちょうどその時、狼が鳴いて宿の障子がびりびりと震えた。姿は見えなかったが、声だけははっきり聞いたと語っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。