大峯山下の五鬼(洞川)
どんな伝承か
大和吉野の大峯山のふもと、洞川という谷底の村には、五鬼某という苗字の家が五軒あり、山上参りの先達職を世襲し、聖護院の法親王が登山するときの案内役を一代の誉れとしてきた。五鬼は前鬼・後鬼とも書き、役行者の二人の侍者の子孫だといわれ、御善鬼様と称して崇める地方もあった。善鬼は五鬼の始祖で、古くは前鬼と呼ぶのが普通だった。前鬼が下界と交際を始めたのは戦国の頃からで、それまでは通力があったが、浮世の娘と縁組みしたために只の人間になったという者もある。それでも近代まで一夜に二十里三十里の山を往復し、茄子を一畑ごと持って行くなど、並みの人を威服させる力を持つと評判されていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。