駒木境の山で狼に討たれた弟
どんな伝承か
明治の初め頃であったか、土淵村字栃内の西内の者が、兄弟二人で二頭の飼い馬を連れ、駒木境の山へ萱刈りに行くと、不意に二匹の狼が出てきた。荷鞍にさしておいた鎌を抜く暇もなく、弟はとっさに道から枯れ柴を拾って二匹に立ち向かい、兄はその隙に三頭の馬を引き纏め、一頭に乗って家へ逃げ帰った。逃げ帰ってもすぐ家族や村人に知らせれば弟も助かったかもしれないが、兄は人に告げなかった。十五にしかならぬ弟は深手を負って虫の息になり、夕方家に帰り着き、縁側に手をかけたままそのまま息が絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。