島の松林で出会った見慣れぬ娘
どんな伝承か
数年前、網地の区長某が海を隔てた対岸の鮎川の寄り合いに出席した。会が終わって酒の酔いでいい気持ちになり、深夜に船で長渡の浜へ帰り、伯父の岩淵という家に立ち寄ってもう一杯重ねてから、迎えの馬で家路についた。島を縦断する街道を馬に揺られて松林まで来ると、この島では見慣れぬ若い娘に出会った。酔っていた区長は馬から下りて娘に話しかけたが、夜更けに独り歩く娘は怖がる様子もない。区長はすっかり上機嫌になり、娘と手を取り合って歩き出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。