山の小屋で唄い続けた花嫁
どんな伝承か
長渡の部落の阿部某が新妻を迎えたが、花嫁は初夜に姿を消し、翌日、そこから程遠くない山の中で顔面蒼白のまま座っているのを見つけられた。無理に連れ戻しても再び山へ逃げ、言い交わした男がいると言って聞かない。医者にも行者にも原因は分からず、家人は山の上に小屋を建てて住まわせ、浜から三度の食事を運んだ。毎晩その小屋のあたりから晴々とした唄声が聞こえ、嫁はこの島には並ぶ者もない良い男が唄って聴かせると恍惚として語った。島の者は誰もその男を見ず、正体は山猫だと信じた。嫁は三、四ヶ月で痩せ衰えて亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。