山の小屋で唄い続けた花嫁
どんな伝承か
長渡の部落の阿部某が新妻を迎えたが、花嫁は初夜に姿を消し、翌日、そこから程遠くない山の中で顔面蒼白のまま座っているのを見つけられた。無理に連れ戻しても再び山へ逃げ、言い交わした男がいると言って聞かない。医者にも行者にも原因は分からず、家人は山の上に小屋を建てて住まわせ、浜から三度の食事を運んだ。毎晩その小屋のあたりから晴々とした唄声が聞こえ、嫁はこの島には並ぶ者もない良い男が唄って聴かせると恍惚として語った。島の者は誰もその男を見ず、正体は山猫だと信じた。嫁は三、四ヶ月で痩せ衰えて亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。